
古今東西、いろいろなイカの塩辛を食べ比べてみると、それぞれの塩辛が持つ豊かな個性に驚きます。
属するエリアの気候や風土、伝統製法なのか最新技術なのか、等によって様々な表情を見せるのがイカ塩辛を楽しむ際の大きなポイントになってきます。
今回はそんなイカの塩辛を大きく分類し、それぞれに作り方などを解説していきます。
【 イカの塩辛の種類・作り方】イカ塩辛の種類は、大きくわけて3種類。
イカの塩辛は、その製法から大きく分けて…
- 赤作り
- 白作り
- 黒作り
の3種類に分類することが出来ます。
中でも赤作りについては、
伝統的な製法と、最近の製法とで、内容が大きく異なります。
今回はわけて解説していくことにしましょう。
【 イカの塩辛の種類・作り方】その①:伝統的赤作り
原料には近海産のスルメイカを用います。
最近は外国産のイカも原料にされていますが、肝臓だけはスルメイカでなくてはならない!といわれているそうです。
伝統的赤作り塩辛の作り方
原料イカは、するめを製造する場合同様にさばいて、内蔵・眼球・口球・内殻を取り除きます。
内蔵から墨袋を破らないように注意しながら取り出した肝臓は、流水でよく洗い、表面の汚物を覗いてから十分に水切りします。とくに頭脚肉はもむようにして水洗いし、吸盤中のあ角質環を除去します。
細切りにした胴肉・頭脚肉を大型の樽に入れ、これに食塩および肝臓を加えて、十分に撹拌混合します。
食塩はふつう、10~20%加えます。
肝臓は、皮を除いてほぐしたものを5~10%添加します。
熟成期間は10-20日間で、
この間、はじめの10日間は毎日3回以上の撹拌を行います。
(先端に板のついた棒で、樽の底までつくように100回以上!)
10日くらいたったら、撹拌の数を減らしてもOK。
熟成したものは容器に詰めて出荷します。
出荷する前に米麹・みりん・香辛料などを加える場合もあります。

上は比較的伝統的製法に近い塩辛例。塩以外の添加物も多少入っているものの、少ない。塩辛さが強烈で、目が覚める。

こちらは珍しい、アオリイカ内蔵のみの塩辛。塩、のみ添加。クセはあるが、クリアな味わいがうまい。
【 イカの塩辛の種類・作り方】その②:最近の赤作り
最近の赤作りの特徴は、食塩の添加量が少ないことと、熟成期間が短いこと、です。
最近の赤作り塩辛の作り方
胴肉と頭脚肉を水洗いしたのち、十分に水切りします。
これに5%程度の食塩を加えて2~3時間塩切り(脱水)します。塩切りしたものは機械にかけて細切り。肝臓は10%程度の食塩を加えて1~3週間、室温で熟成させておきます。
細切りした肉に対して3~7%の熟成させた肝臓と約1%の食塩を加え、同時に諸々の添加物(調味料)を7~8%添加し、よく混合してから大型の容器に移し、3日間程度熟成させてから製品とします。この間、毎日数回、撹拌します。
機械化の進んだ加工場では、5トンのステンレス製タンクに入れ、1日数回、自動的に撹拌しているところもあるそうです。
この製品は熟成期間が短いため、添加した調味料で風味を増強しています。
また、添加した調味料で水分活性はある程度低下する(=微生物が増殖しにくくなる)ものの、塩分濃度が低いので低温に貯蔵する必要があります。


【 イカの塩辛の種類・作り方】その③:白作り
原料には近海産スルメイカの胴肉だけを使います。
白作り塩辛の作り方
胴肉は鰭を切り離し、表皮を剥ぎます。表皮を剥いだものは洗浄したのち、十分に水切りします。肉厚のものは3枚に、肉薄のものは2枚に卸し、赤作りよりも細く切断します。
鰭は皮を剥いだのち2枚に卸し、細切りして使用することも。
細切肉に17~18%の食塩と3%くらいの肝臓を加え、赤作りの場合と同様に撹拌しながら熟成させる。肝臓の添加量が多すぎると赤褐色に着色する。肝臓のかわりに米麹を添加することもあるそうです。

【 イカの塩辛の種類・作り方】その④:黒作り
黒作り塩辛の作り方
白作りと同様に細切りした胴肉に対し、食塩10~15%、肝臓8%、袋から出してよくすりつぶした墨3%(原料イカの全量)を加え、容器に漬け込む。漬け込んだものは毎日数回、撹拌して熟成させます。
黒作りといえば、別の記事で以前ご紹介したすみいか(大城海産加工所)。


【イカの塩辛の種類・作り方】まとめ:イカ塩辛の多様性は、私たちの知的好奇心を満たしてくれる

以上、”イカの塩辛の種類と作り方”をお伝えしてまいりました。
そのエリア独自の食文化を映し出す鏡として、各地でイカ塩辛がユニークに進化している様子がとても面白いです。
またここに紹介した他にも、既成の概念を打ち破るニューウェーブにも、少し調べれば簡単に出会うことが出来ます。
是非このイカ塩辛の深い海の中に、ズブズブと沈み込んでみてください。
では、今日はここまで。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございましたくコ:彡